読書…中東問題の歴史を知る2冊
昨年末から正月にかけて読んだ2冊の中東問題研究書のご紹介。1冊目は山内昌之「中東国際関係史研究史―トルコ革命とソビエト・ロシア1918-1923」(岩波書店 2013年11月)で、第一次世界大戦後にオスマン帝国が解体しトルコ共和国が形成される過程を、軍人政治家キャーズィム・カラベキルの思想と行動を中心にそえて語った一大叙事史。本文だけで上下2段組み808ページに及ぶ大著であるが、戦争と平和、民族と宗教、ロシアと英国の対立、ライバルである“建国の父”ケマル・アタテュルクとの確執など通常の学術書にはないストーリーの面白さが魅力である。本体価格16,800円と高価なのが難点だが港区図書館で借出可能である。
2冊目は佐原徹哉「中東民族問題の起源―オスマン帝国とアルメニア人」(白水社 2014年7月)。トルコの領土画定をめぐる対アルメニア戦争は前記研究書の中心テーマの一つであるが、これはその前史とでも言うべき「アルメニア人虐殺」の実態と原因を解明しようとする意欲作。民族と宗教の対立が独立運動や政治形態、大国との抜き差しならぬ関係にどのような影響を及ぼすか、これは現在の中東問題を考える上でも多くの示唆を与えてくれる。これも港区図書館で借出可能である。(レポーター KURAMON)
2015.01.23